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【三重】独自の胃壁固定具を開発、診療報酬の加点にも取り組み評価を獲得-鮒田昌貴・ふなだ外科内科クリニック院長に聞く

「鮒田式胃壁固定具II」は片手で胃壁と腹壁の縫合固定が可能

ふなだ外科内科クリニック(松阪市)院長の鮒田昌貴氏は、世界で使用されている医療機器「鮒田式胃壁固定具」の考案者。また、胃壁腹壁固定術の診療報酬獲得に対する取り組みを長年続けており、2026年度診療報酬改定において一定の評価を得ることができたという。今回は、鮒田式胃壁固定具の開発や診療報酬獲得のエピソードについて鮒田氏に話を聞いた。(2026年3月15日オンラインインタビュー、計3回連載の2回目)

内視鏡による胃瘻造設が主流になると直感、胃壁固定具の開発を始めた

――鮒田先生は、世界で使用されている医療機器「鮒田式胃壁固定具」の考案者として知られています。鮒田式胃壁固定具を考案された経緯を教えてください。

 

 1987~1988年に赴任していた新宮市立市民病院(現・新宮市立医療センター/和歌山県新宮市)の医局会で、脳神経外科の先生が、国際学会に発表する内視鏡を使った胃瘻造設術について発表された映像を見たのがきっかけです。アメリカで考案された方式で、今で言う経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)ですね。

 

 それまで胃瘻造設は開腹により行われており、閉腹する時に小腸を戻すのに難渋した経験がありました。内視鏡を使った手術はそれに比べると簡単ですから、今後はPEGが主流になっていくと確信し、自分でもこの術式を行いたいと思いました。

 

 けれども、当時市販化されていた経皮内視鏡的胃瘻造設キットは種類が少なく、いくつかキットを取り寄せて確認してみたところ改良が必要だと感じました。初心者でも安全かつ確実に行える方式を取り入れなければならないと思い、そのためにはあらかじめ胃壁と腹壁を固定する必要があると考えました。そこで私が考案したのが、「胃壁固定具」と命名した道具です。ただ、この胃壁固定具は両方の手がふさがり、胃の中をモニターで見ながらの操作ですと、よほど慣れないと思い通りにいかないことが分かりました。目をつぶって行っても胃壁と腹壁を結紮縫合できる仕組みが必要だったのです。

 

――かなりハードルが高かったのですね。

 

 いろいろな文献を調べている中で、海外に一つだけ、胃壁と腹壁を縫合固定できる器具があることを知り、すぐに取り寄せました。とても素晴らしく、自分が苦労していたことが一気に解決したと思ったのですが、実際に使ってみるとまだ改良点があると感じました。そこからさらに数々の試行錯誤を繰り返した末、1990年に完成したのが鮒田式胃壁固定具です。

鮒田式胃壁固定具

 

 鮒田式胃壁固定具は1993年にクリエートメディック社から市販化され、1994年に特許を取得。2010年にはワンハンドタイプに進化した「鮒田式胃壁固定具II」が登場しました。片手で操作できるので術者は手元を見ることなく内視鏡の画面を注視することができ、経皮的胃壁固定法(PG)がより安全に簡便に行えるようになりました。こちらも2011~2012年に特許を取得し、2015年にグッドデザイン賞を獲得しています。

鮒田式胃壁固定具II

2026年度診療報酬改定で、胃壁固定に係る技術が点数として評価された

 

――鮒田先生は、胃壁腹壁固定術の診療報酬獲得に対する取り組みを長年続けられています。申請技術名「経皮的内視鏡下胃瘻造設術実施時の加算点数」を日本消化器内視鏡学会を通じて厚生労働省に申請し、2026年度診療報酬改定において“胃壁固定に係る技術の評価”が認められました。

 

 私が関わった部分の2026年度診療報酬改定には、以下の通り記されています。太字の部分3カ所が今回の変更点です。

 

 K664 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む。)6570点

 

(1)経皮的内視鏡下胃瘻造設術を行う場合においては、胃壁固定具を用いるなど、予め胃壁と腹壁を固定すること。なお、所定点数には胃壁固定の手技に係る評価を含む。また、経皮的内視鏡下胃瘻造設術で用いるカテーテル、キット及び胃壁固定具の費用は所定点数に含まれ別に算定できない。

 

――診療報酬が従来の6070点から6570点へ500点加点されました。

 

 こちらとしては1200点の加点で申請していました。現在6社ほどのメーカーから胃壁固定具が発売されており、平均価格などを考慮してこのぐらいの点数が妥当ではないかという形で厚生労働省にお願いしたのですが、結果は500点の加点でした。長年取り組んできたことが、全部ではないですが報われてうれしいですね。

 

――「胃壁固定具を用いるなど」という文言が追加されましたが、これはどのような意味を持つのでしょうか。

 

 診療報酬の文章の中に「胃壁固定具」という言葉が入ったことで、「胃壁固定具とはあらかじめ胃壁と腹壁を固定するための道具」という意味を持つものとして明確に示されました。

 

 「胃壁固定具」という言葉は、「鮒田式胃壁固定具」として私が命名したものですが、現在はいろいろなメーカーが製造していますから私だけのものではなく、今回の加点によって私に収入が発生することはありません。全国で胃壁固定を行っている先生方や医療現場にとって喜ばしいことではないかと思っています。

 

――「所定点数には胃壁固定の手技に係る評価を含む」という文言も追加されています。

 

 実はこの部分が非常に重要です。2022年の診療報酬改定で「予め胃壁と腹壁を固定すること」という一文が加わり、これまでの申請・嘆願の成果が認められた形でしたが、加点はありませんでした。経皮的内視鏡下胃瘻造設術においては胃壁腹壁固定術の実施が必須となるのに加点がないということは、医療機関としては持ち出しになるわけです。

 

――加点を目指して引き続き申請を続けることになったのですね。

 

 その後、三重県保険医協会を通じて厚生労働省とヒアリングを実施した際、今後の加算点数化に向けては「改めて学会のコンセンサスが必要」であるとの見解が示されました。

 

 そこで、医療機関を対象とした全国アンケート調査を2023年に実施したところ、胃壁腹壁固定術の有用性が再確認され、92%の医師から加算点数化の賛同を得ることができました。調査結果を論文にまとめ(原著論文としてアクセプト済)、新エビデンスとして日本消化器内視鏡学会のコンセンサスを得て2026年度の診療報酬改定に向けて申請を行いました。

診療報酬点数改正用日本消化器内視鏡学会申請書

 

 今回の診療報酬改定で「所定点数には胃壁固定の手技に係る評価を含む」という一文が加えられたと共に点数も評価されたことは、これまで取り組んでいただいた皆様のお力の賜物であると思っています。

 

――今後はどのような取り組みを行っていくのですか。

 

 胃壁固定具の開発に対しては、いくつもの国内・国際特許を取得しており、クリニック内に特許賞や胃壁固定具の試作品、発表論文などを展示するスペース「鮒田式胃壁固定具ミニミュージアム」を2011年7月より公開していますが、手狭になり当院の近くに私設の天王山会館(鮒田昌貴記念館)を2016年4月に造り、医療関係者に公開しています。

鮒田式胃壁固定具ミニミュージアム

 

 また、胃壁固定についての本を出版できればと考えています。鮒田式胃壁固定具の開発、診療報酬改定の運動、学会での議論などをまとめた本を出して、若手の先生方にも読んでいただければうれしいですね。

 

◆鮒田 昌貴(ふなだ・まさき)氏

 

1980年、三重大学医学部卒業。三重大学医学部附属病院、上野市民病院、新宮市立市民病院、小山田記念温泉病院での勤務を経て1991年、ふなだ外科内科クリニックを開業し院長に就任。医学博士。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定健康スポーツ医。日本医師会認定産業医。

 

【取材・文=荒川慎司(写真は本人提供)】

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